発達障害とは



身体障害・知的障害・精神障害の3障害の中の精神障害の中に位置付けられるのが発達障害です。

発達障害は、平成17年に発達障害者支援法が施行されてから、徐々に学校や企業に言葉と理解が広まりつつある状況です。

では、発達障害とはどのような障害なのか見てみましょう。

発達障害とは、自閉症・アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)などの脳機能の障害であり、発達障害および【社会的障壁により】日常生活・社会生活に制限を受けるものと定められています。(平成28年改正 発達障害者支援法)

アメリカの精神医学会では、自閉症・アスペルガー症候群・その他の広汎性発達障害を総じて自閉症スペクトラム(ASD)といいます。

得意・不得意の差が大きく能力のアンバランスが見られる傾向があります。
また、先天性による脳機能の障害であり、現段階では原因ははっきりと解明されておりませんが、生まれつき脳機能の一部に支障をきたしているとも言われています。
しかし、早い段階から療育・訓練等の工夫を凝らすことにより緩和されていくとされています。

わかりやすく表現すると、『脳のある部分が未発達であったり、働きが上手くいかないことで起こる、様々な状態の総称のこと』となります。

みなさんが普段苦労せずに何気なくやっていることが発達障害の方にとっては難しかったり、周囲から理解されなかったりすることが多く、生きづらさを感じている声も耳にします。
ここで、代表的な3つの特性がありますのでご紹介します。
※下記特性や傾向は個人差があります。参考までにご覧ください。

①自閉症スペクトラム(ASD)
独特のルールや感情表現が苦手であったり、コミュニケーションに難が生じたりする傾向があります。
さらに自閉症スペクトラムは『コミュニケーション面』・『相互的な対人関係面』・『興味や行動の偏り(こだわり) 』の3つの傾向が挙げられます。
『コミュニケーションの障害』
・言葉通りに捉えやすい
・話し方に抑揚がない
・視線が合いにくい
・人との距離感がつかめない
・書き言葉としゃべり言葉が区別されない 等

『相互的な対人関係の障害』
・感情表現が苦手
・物事をストレートに伝えてしまう
・空気を読むことが苦手 等

『興味や行動の偏り(こだわり)』
・一定のこだわりを持つ
・突然の予定変更に対応ができない
・優先順位がつけられない
・興味の幅が狭い 等
また自閉症スペクトラム(ASD)には、4つのタイプがあります。
1.受動型:頼まれたことを何でも引き受けてしまう
2.積極奇異型:思っていることをストレートに何でも伝えてしまう
3.孤立型:決まった行動をし続ける
4.形式ばった大仰型:様々ことに完璧を求めてしまう

例えばAくんの場合…
急に予定が変わったり、初めての場所に行ったりすると不安になり動けなくなることがよくあります。
そんな時、周りの人が促すと余計に不安が高まって突然大きな声を出してしまうこともあります。
周囲の人は「どうしてそんなに不安になるのかわからないので、何をしたらよいのかわからない」と言われてしまいます。
しかし、よく知っている場所では、一生懸命活動に取り組むことができます。

②注意欠陥/多動性障害(ADHD)
『衝動的な言動』や『不注意』、『多動性』が目立つ傾向があります。
正確な原因は解明されておりませんが、行動をコントロールするための抑制力や集中力・計画力・動機づけ等を司る前頭葉等の中枢神経系に機能不全があると言われています。
成長段階に応じて多動性は減少することが多い等、年齢や発達、環境により傾向は変化していくと言われています。

『不注意』
・忘れ物やケアレスミスが多い
・集中することが難しい
・過集中になる 等

『多動性』
・そわそわ、もじもじする
・授業中や公共の場などで静かにできない
・おしゃべり 等

『衝動性』
・思ったことをすぐに発言、失言しやすい
・衝動買いが多い
・他者の話に割って入る
・要約して話すことが難しい 等

『その他』
・よく遅刻する
・片づけられない
・先延ばしにする 等

また、注意欠陥/多動性障害(ADHD)には、3つのタイプがあるといわれています。
1.不注意優勢型:不注意が目立つ場合
2.多動性、衝動性優勢型:多動性や衝動性が目立つ場合。
3.混合型:それぞれが共に目立つ場合。

例えばBさんの場合…
大事な仕事の予定を失念したり、大切な書類を置き忘れたりすることがよくあります。周囲には呆れられ「何回言っても忘れてしまう人」と言われてしまいます。
でも、気配り名人で、困っている人がいれば誰よりも早く気づいて手助けをすることができます。

③学習障害(LD)
全般的な知的発達に遅れはないが、『読み』『書き』『聞く』『話す』『計算する』または『推論する』のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す傾向があります。

『読字障害(ディスレクシア):読みの困難』
・読み飛ばしをする(単語・行)
・形が似た字を間違える
・文字の区別ができない

『書字表出障害(ディスグラフィア):書きの困難』
・句読点が打てない
・鏡文字になる
・うまく綴ることができない

『算数障害(ディスカリキュア):算数・推論の困難』
・数の概念が分からない
・数字や図形を正しく写せない
・繰り上がりが分からない

『その他』
・空間認知が難しい
・左右が分からない
・地図が分からない

例えばCさんの場合…
会議で大事なことを忘れまいとメモをとりますが、本当はメモをとることが苦手なので、書くことに必死になりすぎて、会議の内容が分からなくなることがあります。
後で会議の内容を周囲に聞くため「もっと要領よくメモをとればいいのに」と言われてしまいます。
しかし、苦手なことを少しでも楽にできるように、ボイスレコーダーを使いこなすなど他の方法を取り入れる工夫をすることができます。

また、発達障害は定義上、「通常低年齢において発現するもの」とされていますが、大人になるまで発達障害であることに気づかず、大人になってから診断を受けたり、自覚したりすることもあるようです。
凹の部分に目が行きがちですが、凸の部分も強く、得意不得意が顕著に現れ、特定の分野ではとても優れた能力を発揮できる人も多いです。
また、発達障害の診断基準の条件を満たさないものの、特性を持っている方は、発達障害の「グレーゾーン」と呼ばれています。
忘れっぽい・空気が読めない・ミスをよくするなど発達障害の症状が少し見られても診断基準を満たさず、極端に日常生活に不都合がない状態であったり、通常学級・職場では大きな問題なくやっていけたりする範囲であればグレーゾーンと診断されることもあるようです。


【発達障害の原因とは】
人間の中で最も大切な部分が脳だと言われています。何を見てどう考えるかで人の行動にも影響が生じます。
言葉・音・味・痛み・温度等の様々な情報を受け取り、コントロールしている部分が脳です。
その脳機能の一部に何かしらの支障をきたし、影響している状態が発達障害と言われています。
発達障害に対し、様々な誤解があるのも事実です。「親の教育」や「いじめ」、「職場での不適応」が原因と考える方も多いですが、研究が進み、先天的であることが明らかになってきています。
また一部の特性には、それを抑えるための薬もあり、薬以外にも福祉的なアプローチや療育により症状を改善し、社会に適応する能力を伸ばすことができます。
前述した通り、原因は完全に解明されていないため、同じ障害でも現れる特性は子どもたちによって異なります。
そのためお子さま一人ひとりにあったサポートづくりが大切となってきます。

【発達障害と併存しやすい障害や症状について】
発達障害は精神障害に分類されるため、精神障害にも少しだけ触れておきます。
精神障害は、脳および心の機能の障害で起きる精神疾患により、日常生活や社会参加に制約がある状態をいうとされています。
診断を受けてもグレーゾーンだとしても特性に何かしらの対策を行っていないと困難にぶつかることもあります。
その結果環境との不適応が続き、二次障害としてうつ病や気分変調性障害・双極性障害・不安や恐怖が持続する不安障害・強迫性障害などの気分障害・ストレスを原因とする心的外傷後ストレス障害(PTSD)・統合失調症・パニック障害などの精神疾患を伴うことがあります。

【発達障害の割合について】
保育園・幼稚園・教育現場・職場で少しずつ発達障害についての理解や言葉が知られつつありますが、実際にその割合は、どのようになっているのか見てみましょう。
文部科学省が平成24年に全国の岩手県・宮城県・福島県を除く、公立小中学校で約5万人に実施した調査の結果では「発達障害の可能性がある」児童生徒の割合は6.5%。15人に約1人という割合です。
これはクラスに2人程度は発達障害の傾向があることになります。
このデータは、通常学級に通う生徒を対象にしているため、現状は6.5%よりも高い傾向にあると言われています。
また、原因は解明されておりませんが、文部科学省の調査では、女性よりも男性の出現率が高い傾向があるとされています。


【発達障害の診断方法】
ここまで、発達障害の原因や割合を見てきましたが、実際どのようにして診断を受けられるのか診断方法をご紹介したいと思います。
子どもの場合は、児童精神科・小児科・小児神経科等で診断を受けることができます。
大人の場合は、精神科や心療内科等で診断を受けることができます。

【発達障害の症状の軽減方法】
発達障害は療育を行うことで症状を軽減することができると言われています。
対人面や認知に困難が生じている場合ならSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)。
感情のコントロールが難しい場合は、感情面のトレーニングなどを取り入れる必要があります。
児童を対象とした事業所では、主に、学習系・運動系などの療育が挙げられます。
発達障害には個人差があるため、一人ひとりの困っているニーズを把握し、それに見合ったサポートをすることが大切です。

【発達障害と知的障害の違いとは】
発達障害と知的障害の違いについてみてみましょう。
知的障害は、日常生活で読み書きや計算などを行なう際の知的行動に支障がある状態で、知能指数が基準以下の場合に認定されています。
申請できる手帳は、療育手帳で、診断は医療機関や地域によって異なりますが、1〜4の等級に分類され、数字が小さいほど重度となっています。
法令では、「発達期(おおむね18歳未満)において遅滞が生じること・遅滞が明らかであること・遅滞により適応行動が困難であること」という3要件が基準とされている場合が多いです。
そのため、成人になって、病気や事故・認知症等により知的機能の低下がみられた場合は「知的障害」に含まれません。
知的障害の特徴は、全般的に発達が緩やかで、特に言葉の発達が遅れる点が挙げられます。
一方で発達障害は、知的に遅れはなく得意・不得意の差が大きく能力のアンバランスの差が見られることが特徴となっています。


【年代別発達障害の傾向と対応のポイント】
特性が明らかになるのは、2〜3歳前後と言われています。そのため発達の凹凸に、保護者が気づくのは、1歳6か月健診や3歳児健診、入園がきっかけとなることが多いようです。
年代別発達障害の傾向と対応のポイントを幼少期・学齢期とみていきましょう。
◇幼少期
1歳頃までに愛着が形成される準備が整います。発達障害のある子どもは、生まれながらにもつ本人の資質等が原因となり、愛着形成に時間がかかることがあります。
愛着形成が進むと母親・父親がいないことに不安になったり、褒められることをまたやろうとする気持ちが芽生えてきたりします。
愛着形成は、お子さんの発達にとってとても大切です。五感を豊かに働かせられる遊びの提供とともに、大人が一緒に遊ぶ機会を増やし、共感を生むことで愛着形成を促します。
一般的に2歳頃までに自我が形成される準備が整い、3歳頃には自我が強くなる傾向があります。

◇学齢期
10歳頃になると、学校生活にも慣れ始め、できた・嬉しいなど自分を大切にしたり、自身のなりたい姿を考えるようになったりする時期を迎えます。
みんなの前で先生に褒めてもらったという経験や自尊心が欠如してしまうと、社会生活を送るために必要なセルフコントロールが失われたり、自己肯定感が低くなったりしてしまいます。
特に発達障害では、この自己肯定感が低いことが多いと言われています。
大きなことを成し遂げた時のみ褒めるのではなく、小さなステップを上がることができた際や些細な気づきを発見できた際には、褒めてあげる習慣を持つと良いかもしれません。
悪いことばかりに着目するのではなく、良いところを見つけ、しっかりとその都度伝えることが大切です。
その他にも具体的に何をしたら良いのかを伝えたり、目標を達成するためのスモールステップで場面設定を行なったり、自身の適切な行動を増やしていくことも大切になってきます。

【子どもの発達について気になった場合の相談先について】
実際、どこに相談したらよいのか迷われている方もいるのではないでしょうか。
小学校入学前は、各市町村の保健センター・児童相談所、地域の発達障害者支援センター・精神保健福祉センター等が挙げられます。
◇保健所・保健センター
地域の保健所や保健センターでは、乳幼児以外にも学齢期のお子さんの相談にものってくれます。
◇児童相談所
各市町村に設置してあり、18歳未満の子どもに関する相談を受け付けています。
◇発達障害者支援センター
発達障害児・発達障害者への支援を総合的に行なう専門機関です。保健・医療・福祉・教育の分野とも連携しており、様々な助言等を行なっています。
◇精神保健福祉センター
引きこもりや精神障害等の心の相談の窓口となっています。
◇大学の研究室に併設された総合相談センター
発達障害に関して相談できる窓口を持っている大学もあります。

【早期療育的支援の重要性とは】
本記事を読まれている方は、一度は療育という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。さて、その言葉の意味はご存知でしょうか。
療育とは、発達障害など様々な障害を持つお子さんにその特性による生きづらさを改善し、社会自立やより制約の少ない生活ができるように、医療面や専門的な教育機関と連携をして、必要なトレーニングを施していくことです。
療育は、医療と保育・教育の双方の視点から着替えやトイレなどの生活スキル、運動、認知、言語等に働きかけます。興味関心を高めたり、身近な人や周囲との関わりを深めたりする段階から療育を受けることで、社会適応能力を早期から高めることができます。
そのため早期療育はとても重要と言われています。
また、療育では保育園・幼稚園・学校よりも少人数でお子さんと接するため、お子さん一人ひとりに合わせてサポートして行くことが可能です。
そのため、お子さん一人ひとりの「できた」、「やればできる」という喜びをより得られることができます。
そして、喜びを得られることで自己肯定感も高まります。
アプローチ方法は、各お子さんの特性や状況によって様々なため、各事業所の見学や体験を重ね、比較し、愛するお子さんにとって最適な療育施設を見つけることができると良いでしょう。


【発達障害とはのまとめ】
昨今発達障害は、段々と理解が広まりつつある状況ではありますが、まだまだ理解が追いついていない学校や企業があるのも事実です。
医師の診断で診断名が出ることもありますが、診断名だけで判断してはいけないとも感じています。
発達障害を日常生活のもので例えるならば、お弁当箱のようなイメージだと考えています。
例えば医師の診断で自閉症スペクトラム(ASD)と診断が出たとします。
お弁当の中身で考えると主菜がASDで、おかずである副菜がADHDやASDの特性が何個かあるというイメージです。
時には主菜のごはんにおかずである焼き肉のタレのADHDの特性が流れ込んだりすることもあるということです。
よって、診断名だけで一概に判断するのではなく、個々の状況に合わせて寄り添っていくことが大切だと考えています。
また、一つのクリニックで診断を受けて判断するのではなく、セカンドオピニオンを受けることも良いでしょう。
前述した通り、早期療育を行い、早い段階から工夫を凝らすことで、宝物であるお子さんたちの「ギフト」がより輝き、多くの「出来た」「楽しい」「嬉しい」を感じることができると思います。
早期療育の段階では、学習面に特化した事業所・運動系に特化した事業所等と様々な療育があるため、お子さんにあった事業所を選択し、早期療育に接してほしいと強く感じています。
ヨリドコロでは、お子さんの中に秘められた個性や宝、「ギフト」を、アートデザイン療育を通し、最大限引き出すことを目指しています。
「発達に遅れがあるかもしれない」「診断を受けたけど、どうしたら良いのか分からない」「ヨリドコロの雰囲気を感じたい」等ございましたらお気軽にお電話・ご見学にいらしてくださいね。

【参考文献】
・発達障害の基礎知識 宮尾益地 河出書房新社
・子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本
・リタリコ
・ハッピーテラス
・厚生労働省
・ベネッセ
・よくわかる大人の発達障害
・よくわかる発達障害
・LD研修資料
・前職の訓練資料