ADHD(注意欠陥/多動性障害)とは


ADHD(注意欠陥/多動性障害:Attentiion-Deficit/Hyperactivity Disorder)は『不注意』や『多動性・衝動性』という3つの傾向が見られる発達障害の一つです。
本記事ではADHD(注意欠陥/多動性障害)について詳しく解説していきます。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)の3つのタイプと傾向
前述の通りADHD(注意欠陥/多動性障害)には主に3つのタイプの傾向があります。
・不注意…集中力がない、気が散りやすい、話を聞かない
・多動性…落ち着きがない、じっとしていられない
・衝動性…順番を待てない、考える前に実行してしまう 等

誰にでも忘れ物をしてしまうことはありますし、ついカッとなり友達と喧嘩になってしまうことはありますが、ADHDはアメリカ精神医学会の診断基準『DSM-5』にて、早い時期で幼児期から発症し、6ヶ月以上継続して『生活面・学習面に影響を及ぼしている』場合に診断されることがあります。
学齢期以前の幼児期の場合は、同年齢の子どもたちとの『不注意・多動性の差』を見ていく必要があります。
また、自宅等の生活面や幼稚園・保育園といった2場面以上で観察されなければ診断基準は満たされないと言われています。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)の子どもによく見られる行動とは
ADHDの子どもの行動面での傾向としては前述したもの以外にも下記があります。
・一つのことに集中していられない、目の前の作業にすぐ飽きて退屈になる
・物事を忘れる
・話(気)を逸らされる、話を遮って話す、会話が終わらなく喋り続ける
・他者の作業の邪魔をする 等

また、男子・女子で目立つ傾向にも違いが見られ、男子の場合は多動性、衝動性が目立ちやすく、女子の場合は不注意が目立ちやすいと言われています。
そのような男女の傾向の違いにより、目立つところばかりが問題視されがちになり、周囲や自分自身がADHDであると気付きにくい場合があります。
また前述した傾向は誰にでもあてはまるような内容でもあるため、なかなかADHDと判断されにくい実態があります。
ADHDの子どもは、多動性や衝動性といった傾向から、『迷惑行為をする』と周囲に受け取られることもあり、叱られてしまうこともあります。
本人自身も失敗自体は理解しているものの、つい考えるよりも先に行動してしまうため自信を失いがちで、そこから更に自信の喪失にもつながり「僕はダメな子だ」と思うようになってしまうこともあります。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)の子どもの接し方とは
ADHDのお子さんに対しては、下記4点を心がけることが大切です。
1、しっかりと具体的に褒める。
一つのことを無事に成し遂げた際は、積極的にその場で褒めましょう。
ADHDの子どもは一度に複数の事を理解し行動することは苦手ですが、一つのことは実行できるといった傾向があります。
例えば手伝いをしてもらい、できたらその場で褒め、簡単な一つのことからでも褒められる実感を増やしていくことを習慣化すれば、子ども自身の自己肯定感も育まれ自信につながります。
もしうまく出来なかった場合も叱るのではなく、優しく穏やかな声で次がうまくいくようにアドバイスをしてください。褒めるタイミングも『その場』で褒めることが最も効果的と言われています。「あの時はありがとう」といわれても「どの時だ?」と疑問に感じることになってしまいます。
『椅子にしっかりと座れていた』、『積み木を高く積めた』など、出来たこと一つ一つをしっかりと具体的に褒めるようにしていきましょう。

2、ルールを理解させる
『不注意』の特性上、突拍子もない行動に出ることも多々あり、突然車道に飛び出したり家では『多動性』も相まってテーブルの角にぶつかる等といったこともあります。
そういった危険察知能力が乏しい場合には、安全な行動やルールを教えていくことが大切です。
例えば屋外であれば、「(信号が)青になったら渡ろうね」「渡る時は左右見て車が来ないか見ようね」といったように、交通安全の基本ルールを教え、習慣化するようにしていきます。
実際外出中に保護者がお手本として一緒に行うとより理解も深まりやすいです。
しかし、世の中には交通ルールに留まらず様々なルールが存在します。
例えば「建物の中では走らない」、「病院内は静かにする」など、そのルールは暗黙のものも含め幾多にも及びます。幼稚園や保育園といった施設でそのようなルールの一部を教わることもあるかもしれませんが、ADHDの子どもが言われてすぐに理解できるかどうかはわかりません。
そのため、その後の習慣化が大切となってきます。また言葉やお手本で教えるだけでなく、お絵かきが好きな場合はお絵かきセットなどのアイテムを持ち歩き静かにさせるなど、お子さんに合わせた手段を工夫してみてください。
他の障害症状と併用になりがちな発達障害において『絵カード』は視覚優位のお子さんたちにとても効果的です。すぐに定着することはなかなか難しいかもしれませんが、しっかりと理解してもらえるように工夫をしながら根気強く継続することが大切です。ADHDのお子さんの場合の絵カードの効果は、スケジュールや忘れ物チェックなどが挙げられます。
例えばスケジュールの絵カードであれば、
『夜の絵』+『19(7)時の針時計の絵』+『お風呂の絵』
と表示すれば、見たままに「19時にお風呂」だと理解していくことができます。
「(『夜の絵』+『19(7)時の針時計の絵』を提示しながら)この時間になったら」「(『お風呂の絵』を提示しながら)お風呂に入ろうね」と、言葉と提示した絵をリンクさせるように説明してあげましょう。
最初は言葉と絵のリンクも難しく理解せずに別行動を取ることも多いかもしれませんが、根気強く何度も教えていくことが大切です。

3、伝わるように伝え方を工夫する
子どもが集中している時、注意をしてもその注意自体を聞いていないことがあります。その場合は子どもの注目をこちらに向けてから、伝えるようにしてください。
またすぐに目の前のことから別のことを実行させるのではなく、「〇分になったら」等と事前に告知する方法も効果的です。
この他にも注意する際の『口調・表情・発言』でも変化が起こります。
「○○君はちゃんとできるのにね」といった他者との比較や「あなたはダメな子」といった言葉は子どもの心にダメージを与えてしまいます。
子どもは注意の仕方一つで大きく変化していけることを理解していきましょう。

昨今では保育園や幼稚園、療育施設や家庭内での療育が主流となっています。ご家族だけでなく、全ての関連機関がお子さんの症状を理解し、各施設間の連携やご家族との入念なやりとりによる配慮・支援により、子どもたちが生活しやすい環境づくりを心がけていきましょう。


ADHDは日本だけ?
ADHDの子どもは日本だけではなく、世界中で見受けられる障害ですが、中でも日本は診断ケースが多い国とされています。
これは国ごとの診断基準の違いでもあり、海外ではADHDと診断されないレベルでも日本は空気を読む文化であることもあり、海外より診断ケースが多いと言われています。
しかし実際には世界中に一定の割合で存在していると言われています

ADHDの発症の原因とは
日本でのADHDの定義は『年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、衝動性、多動性』とされています。発症の原因は現在も明確にはわかっておりませんが、しつけや育て方等は直接の原因にはならないと言われています。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)に起因する二次障害の可能性について
ADHDに起因する二次障害の可能性について、主に精神的苦痛からなるものと身体的苦痛に伴い二次障害へとつながる場合があると言われています。保育園や幼稚園、学校等の集団生活に馴染めなかったりすることなどから自信を無くし、過度な緊張やうつ病、ひきこもりなどの精神面における症状や頭痛、腹痛、めまいといった身体的な不調等が二次障害として挙げられます。
このような二次障害を避けるためにも周囲が理解し、協力・支援をしていくかが重要です。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)とはのまとめ
ADHDといっても個人差があり、子どもたち一人ひとりにあった生活支援を行うことが大切です。少しでも気になる点がありましたら、お近くの専門機関に相談してみると良いでしょう。