学習障害(LD)とは


「学習障害(Learning Disability:LD)とは、基本的には全般な知能発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害・聴覚障害・知的障害・情緒障害などの障害や環境的な要因が直接の原因となるものではない。」と定義されています。
学習障害と呼ばれる子どもたちをひとくちで説明することはなかなか難しいのですが、「知的発達に大きな遅れはないにも関わらず、学習面での特異なつまづきや習得の困難をもつ子ども」と言われています。

学習障害の傾向
加齢に伴って文字が読みにくくなる、計算や数を数えることが困難になることはあります。しかし学習障害においてはそのような後天的なものではなく先天的に「文字の解読の困難」や「計算や推論が難しい」といったことが挙げられ、学習障害には大きく3つの分野にわかれて特性が見られます。
一つ目は『読字障害(ディスレクシア)』です。
・「1」と「one」が同じであるという理解ができない
・鏡文字を正しくした文字を理解できない
・「あ」と「め」といった似た形の平仮名の判断が難しい
・小さい文字「っ」「ゃ」などを認識できない
・途中でどこを読んでいるかわからなくなる、飛ばして読んでしまう
などの傾向があります。
二つ目は『算数障害(ディスカリキュア)』です。
・数字の式や関数、繰り上がり繰り下がり(0~10まで進み、次に11に進む・またはその逆といった事)の理解ができない
・簡単な計算記号を理解できない
・数の大小が難しい
・グラフや図形が理解できない
などの傾向があります。
三つ目は『書字障害(ディスグラフィア)』です。
・マスから飛び出て文字を書く
・鏡文字を書く
・書き順が難しい、誤字脱字が多い
・簡単な漢字でも覚えられない
などの特徴があります。

これら3つの分野で1つ以上の傾向が見受けられると学習障害の可能性が考えられます。また学齢期までは正確な判断が難しいとされています。
一般的に人間には得意なことや不得意なことが存在するため一概に判断できず、知的能力の遅れは見られないことが多いため、周囲からは「真面目に勉強していない」「勉強不足」といった印象を受けてしまうこともあります。

その他にも「一部の不得意な分野が周囲の不得意や自身の他の得意分野よりも大きく偏っている」ことが挙げられます。
苦手な教科を勉強することが苦手・嫌なのは誰しもあることですが、他の分野よりも大きな偏りが見られる際は学習障害の可能性が考えられるかもしれません。

学習障害と診断されるポイントとは
知能的に遅れはないのですが、文章を読むのが遅かったり、読み書きが困難であることが学習障害の傾向です。
診断基準としては、『1つ以上当てはまり、少なくとも6ヶ月継続している』ことと定められています。
・文字を読むことに躊躇う、音読の速度が遅い、飛ばし読みや言葉が詰まる
・マスからはみ出て大きく文字を書く、文章(文字)を書く事が難しい
・数字や大小、繰り上げ等の理解が難しい
・数を使った推論(暗算)が難しい、計算が難しい
など、このような傾向が見られた際に脳機能検査を行い、診断されます。


学習障害の原因とは
学習障害が起きる原因は前述した定義の通り、はっきりと解明されておりません。子どもの勉強不足や親のしつけの方法に問題があるわけではなく、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や環境的な要因が直接的な原因となるものでもないとされていて、中枢神経系に何かしらの機能障害が起こっているといわれています。

年代別学習障害の子どもの困りごとと対応策について
「読み・書き・聞く・話す・計算する・推論の習得困難」は「学齢期」に発覚することが多いです。
幼児期であれば、
・言葉を覚えるのが遅い
・折り紙を折る事が難しい
・ボタンがとめられない
・体の使い方がぎこちない
など、「言葉」や「体」のぎこちなさや手先の不器用さが傾向として見られます。
学齢期からは本格的な学習が始まり、少しずつその傾向が目立ちやすくなってきます。
・漫画や絵本の文字や文章の理解が難しく絵だけを見ている
・文章を飛ばし読み(読みながら目線を追う動作が難しく区別がつかなくなり別の行を読む)、たどり読み(文字を一文字ずつ読む。
※『読みが遅い』とされる部分)をする
・普通に話す事は出来るがひらがなを読む、書く事が難しい
・計算を嫌がったり、簡単な計算ができない
など、その傾向が徐々に目についていき、そうした中でも個性と捉えられ、大人になってから学習障害を診断されるという場合もあります。
また成人期では、
・会社でメモを取る事や書類整理といった就業面の困難
・お釣りの計算が出来ない
など、困ってしまう場面は多々存在します。学習障害の判断は専門家ですら難しく、また障害だとわかりにくいため、周囲から理解を得られず、一人で悩んでいたりすることも多いと言われています。
学習障害は早期に発見し、適切な対応をすることで症状を軽減することができ、その後の発育や将来に大きく影響が見られると言われています。
その後の発育や将来に大きく影響がみられると言われています。個人で判断をせず、まずは専門家に相談すると良いでしょう。

学習障害の子どもとの接し方
子どもの学習障害の場合は、基本的に無理をさせないこと、一緒にフォローすることが大切です。
・読むことが困難ならば関心を持てる本を選ぶ、文字を拡大する
・書くことが困難ならば一文字ずつゆっくり書いていく
・計算することが困難ならば簡単な問題を出していく
・話すことが困難ならばしっかり聞き、文を補充する
など、子どもの得意不得意で対応を変えていきます。
そして「否定する」のではなく「フォロー」をしていき、できた際には褒めましょう。
褒められることで自信につながり、苦手なことにも前向きに取り組めるようになります。

学習障害と併存しやすい二次的障害とは
前述の通り、学習障害は判断が難しい障害のため、「周りの人と同じようにできない」「理解してもらえない」ということから自信をなくし、不登校になるなどの二次障害が起きることがあります。
そのような事態にならないような環境づくりと理解が求められます。


学習障害とはのまとめ
学習障害は判断が難しく、大人になってから診断されることもあります。
少しでも不安を感じた際は、医師や専門機関に相談するとよいでしょう。

▼参考URL:
http://www.osaka-c.ed.jp/hirakata-s/kyozai/kotoba-setsumei.html